公益社団法人 地盤工学会

地震時における地盤災害の課題と対策

2011年東日本大震災の教訓と提言(第二次)




　公益社団法人地盤工学会(末岡徹会長)は、今回の東日本大震災における地盤災害に対し、その課題と対策に関する最終的な提言をとりまとめました。
地盤工学会では、これまでも「地震や豪雨・洪水等の地盤災害を防ぐために-地盤工学からの提言」(2009年8月)や「首都圏を直下地震から守るために-地盤工学からの提言」(2005年12月)等を公表しています。また、今回の東日本大震災発生後、2011年7月には、速報性を重視した　
2011年東日本大震災の教訓と提言(第一次)を行っています。第一次提言は、公表後、行政担当者・技術者・研究者・教育者・マスコミ・一般市民等、各方面の方々に広く参照していただけました。
今回の第二次提言は、一次提言の内容の格段の充実を図っています。

すなわち、

1.取りまとめを緊急に行った一次提言では欠落していた幾つかの項目を追加しました。

2.復旧・復興に必要な具体的な技術情報と、有用な参考文献と参考資料の紹介をしました。

3.長期的な研究・調査の展望を示しました。

4.公表から時間が経過するに従って各方面で災害調査が進み、新事実とそれに基づく新たな教訓が得られています。また、各機関で復旧・復興計画の提案と検討が進み、一部実施されるようになってきました。これらを出来るだけ記述しました。

5.今回の大震災からの復旧・復興は、1年以上経過した今日でもその端緒の段階であり、今後長期に亘る見通しです。それらに役に立つ情報を充実させました。

6.今回の大震災からの教訓を基礎にして、今後全国各地で生じる地震による地盤災害を防ぎ軽減するための方策を提言しています。



第二次提言は、以下の項目でとりまとめました。緊急の課題と長期的な課題を区別しています。また、提言の対象者(社会全体あるいは専門家対象)も明記した内容としています。

(1)地盤液状化による被害と復旧・復興(特に戸建住宅)

(2)丘陵地の造成宅地の被害と復旧・復興

(3)巨大津波による被害と復旧・復興

(4)広域の地盤沈降と低平地における浸水対策

(5)災害廃棄物・津波堆積物・放射性物質汚染土壌など、地盤環境問題への対処

(6)自然斜面・切土および社会基盤施設の復旧・復興と地盤工学技術の活用

(7)産業施設の復旧・復興と地盤工学技術の活用

(8)シビアアクシデント対策

(9)資格制度と教育・広報



また、一般の方々から募集した合計70の「地震による地盤災害の防止・減少のための工法・技術を紹介する報文」(それぞれ2頁)を以下の項目ごとに整理して、参考資料として添付しました。

(1) 地盤調査・探査技術

(2) 地盤材料の有効利用技術

(3) 地盤改良技術

(4) 地盤補強技術

(5) 家屋補修・補強技術

(6) 地盤環境保全技術

(7) その他



今回の提言が、被災地の迅速な復旧・復興に寄与するだけでなく、全国で近い将来に生じる恐れがある地盤災害を防ぎ、被害の軽減に向けた行動に活用されることを願っています。




目次




まえがき I



委員会名簿 III



1.　序論

1.1　第一次提言(2011年7月)の経緯

1.2　第二次提言(2012年6月)

1.2.1 経緯

1.2.2 提言の構成

1.2.3 主要な四課題

1.2.4 地盤工学を専門とする技術者・研究者の姿勢



2.　提言

2.1　地盤の液状化による戸建て住宅、ライフライン、道路施設等の被害と復旧・復興

提言1.1　宅地の液状化に対処した戸建て住宅の建設

提言1.2　戸建て住宅を対象とした宅地の液状化の調査・試験・判定方法の開発

提言1.3　宅地液状化による戸建て住宅の沈下・傾斜のメカニズムの解明とハザードマップ

への反映
提言1.4　戸建て住宅および地区全体の地盤の液状化対策方法の開発

提言1.5　平面道路やライフラインの支持地盤の液状化対策



2.2　丘陵地の造成宅地の被害と復旧・復興

提言2.1　今回の震災における宅地地盤被害の徹底分析

提言2.2　応急復旧のための緊急調査の整備

提言2.3　本復旧に向けた方針決定やその主体の明確化と本復旧工法の合理的な選定

提言2.4　今後の耐震補強のための現地調査手法と対策方法の開発

提言2.5　今後の耐震補強のための施策と資料の保存

提言2.6　今後の耐震補強のための地盤情報の公開

提言2.7　戸建て住宅の新設にあたっての施主への説明責任

提言2.8　今後の宅地売買に際しての地盤情報の継承の義務化



2.3　巨大津波による被害と復旧・復興

提言3.1　津波防護施設の耐津波設計の高度化の必要性

提言3.2　津波防護施設の復旧における地盤工学的課題とその対策

提言3.3　耐津波性能を有する港湾空港施設の復旧における地盤工学的課題

提言3.4　耐津波性能を有すべき沿岸域の社会基盤施設の復旧における地盤工学的課題

提言3.5　津波力に抵抗できる建築物の建設における地盤工学的課題

提言3.6　東海・東南海・南海地震等、今後の津波対策における地盤工学的課題



2.4　広域の地盤沈降・沈下と低平地における浸水対策

提言4.1　広域地盤沈降と地盤沈下による被害を軽減するための復旧方針の策定

提言4.2　今後の地震時地盤沈降と沈下に対する対策の提案



2.5　災害廃棄物、津波堆積物、放射性物質汚染土壌など、地盤環境問題への対処

提言5.1　災害廃棄物・津波堆積物の有効利用のための技術開発と合意形成の必要性

提言5.2　震災時に重要となる地盤環境に関する課題の整理と必要な調査

提言5.3　放射性セシウムの地盤中での挙動と措置技術に関する知見の高度化



2.6　自然斜面・切土および各種社会基盤施設の復旧・復興と地盤工学技術の活用

2.6.1 自然地盤・斜面および切土

提言6.1　自然地盤・斜面および切土の耐震診断・耐震補強とそのための行政的配慮

2.6.2 鉄道施設

提言6.2　旧基準で設計・施工された鉄道施設の耐震診断・耐震補強および被災した場合の
強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.3　新基準適合鉄道施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた
今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.3 道路施設

提言6.4　旧基準で設計・施工された道路施設の耐震診断・耐震補強および被災した場合の
強化復旧とそれらのための行政的配慮


提言6.5　新基準に適合した道路施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた

今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.4 河川施設

提言6.6　耐震対策が未実施の河川施設の耐震診断・耐震補強および被災した場合の
強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.7　耐震対策等を実施した河川施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた
今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.5 農業施設

提言6.8　旧基準で設計・施工された農業用ため池・フィルダム施設の耐震診断・耐震補強
および被災した場合の強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.9　新基準適合農業用ため池・フィルダム施設の地震時挙動の検証と
広域多所災害に備えた今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

提言6.10 旧基準で設計・施工された農業用パイプライン施設の耐震診断・耐震補強および
被災した場合の強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.11 新基準適合農業用パイプライン施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた
今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.6 下水道施設

提言6.12 旧基準適合下水道施設の耐震診断・耐震補強および被災した場合の
強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.13 新基準適合下水道施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた
今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.7 空港・港湾施設

提言6.14 旧基準で設計・施工された空港・港湾施設の耐震診断・耐震補強および
被災した場合の強化復旧とそれらのための行政的配慮

提言6.15 新基準適合空港・港湾施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた
今後の耐震対策への最新の地盤工学技術の活用

2.6.8 電力施設

提言6.16 電力施設の地震時挙動の検証と広域多所災害に備えた今後の耐震対策への
最新の地盤工学技術の活用



2.7　産業施設等の復旧・復興と地盤工学技術の活用

2.7.1 産業施設

提言7.1　プラント関係の個々の機器・構造物およびシステム全体の耐災性の確保

提言7.2　プラント機器・構造物および既存施設全体に適した耐災技術の開発

提言7.3　産業施設保有組織を超えた地盤情報の共有化

2.7.2 旧鉱山等施設

提言7.4　鉱山廃棄物の鉱さいダム(鉱さい堆積場)の耐災性の確保の必要性

提言7.5　採掘跡の地下空洞に起因する震災被害を防ぐための情報公開

提言7.6　採掘跡の地下空洞における地震被害を防ぐための調査・計測

提言7.7　採掘跡の地下空洞における地震被害に対する復旧対策と防止策

2.7.3 道路下・地下埋設物周辺の地下空洞

提言7.8　震災に伴う地下空洞の発生を防ぐための情報公開

提言7.9　震災に伴う地下空洞の発生を防ぐための調査・計測

提言7.10　震災に伴う地下空洞の発生を防ぐための対策



2.8　シビアアクシデント対策

提言8.1　シビアアクシデントの影響を低減するための努力

提言8.2　土構造物の機能完全喪失に至るような崩壊の防止

提言8.3　粘り強い土構造物の研究・技術開発の推進



2.9　資格制度と教育・広報

提言9.1　地盤品質判定士(仮称)の資格制度の設立

提言9.2　地盤工学会による地盤災害を防ぐための広報・教育活動の充実

提言9.3　地学教育の充実


3.　2011年東北地方太平洋沖地震被害の概要と地盤工学的課題(風間基樹)



巻末添付資料:地震による地盤災害の防止・減少のための工法・技術を紹介する報文集

(1) 地盤調査・探査技術

(2) 地盤材料の有効利用技術

(3) 地盤改良技術

(4) 地盤補強技術

(5) 家屋補修・補強技術

(6) 地盤環境保全技術

(7) その他