はじめに

「東日本大震災合同調査報告　地盤編2　資料編」(以下,「本編」)は,地盤工学会が出版する「共通編3　地盤災害」,「地盤編1　地盤構造物の被害と復旧」と共に,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が引き起こした地盤災害の全容を,これら3編で明らかにすることを目指している。

今回の地震による地盤災害調査には,その被害が極めて広域に亘ったため,被害を受けた地域(東北支部)と他支部が連携して,全国から数多くの会員が一次・二次の東日本大震災調査団の調査員として参加した。これらの調査の結果,GPS(全地球測位システム)等の新しい技術を活用して,詳細かつ数多くの調査データを得ることができた。調査員の必死な努力の賜物である。

その成果は調査と同時進行的に,学会HP,学会誌,地盤工学ジャーナル,Soils and Foudation,災害調査報告会を通じて速やかに内外に発信された。さらに,第一次・第二次提言,そして,4つの会長特別研究委員会の成果を,社会に発表することに結実した。

本編は,上記の調査データ・調査活動を,将来,活用ができる形で収録したものであり,次の章構成と内容になっている。

第1章「地盤工学会の震災発生後の対応」では,東北地方太平洋沖地震が発生した当日に設置された災害対策本部(後,会長特別委員会に発展)から,調査団の活動,他学会・外部機関と連携,第一次・第二次提言,会長特別研究委員会まで,学会としての活動が整理されている。

第2章「『東北地方太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明委員会』による調査データ」では,千葉県,茨城県を始め関東7都県の砂地盤の液状化現象の詳細なデータが纏められている。液状化被害のあった地点だけでなく,被害がなかった地点の情報も含まれている。

第3章「『東日本大震災報告書　共通編3　地盤災害』に関する写真・データ・補足資料」では,共通編3の「各地で発生した被害調査・復旧状況の報告」に頁数の制約等で掲載できなかった貴重な情報が,示されている。中でも,津波堆積物,放射性物質に汚染された地盤についての報告は,前例が殆どないものであり,より詳細なデータが示されていることが注目される。

第4章「その他の調査データ」では,地盤工学会誌,地盤工学ジャーナルに掲載された記事等が纏められている。将来アクセスできなくなる可能性の高いWeb上の情報を紙媒体に留めておくことは,今後の調査でも重要となろう。

本編の編集は地盤工学会が担当しましたが,日本地すべり学会・日本応用地質学会を始めとする他学会・研究機関,及び,国土交通省・浦安市等の諸機関の多大なご協力をいただきました。また,執筆者・データ提供者・編集委員・編集補助者のご貢献に,心より感謝いたします。

特に,本編編集の中心的役割を果たされました磯部 公一 准教授,森　友宏 助教のご尽力に深く謝意を表します。

最後に,本編のような形で多くの貴重な資料を取り纏めて,将来の活用に供すべきであることは,発災時の地盤工学会会長 日下部 治 教授が当初から力説されたことを,書き留めて置きたい。


2015年3月
地盤編2　資料編
統括　岸田　隆夫


―　目次　―

【冊子版】

第1章　地盤工学会の震災発生後の対応

第2章　「東北太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明委員会」による調査データ

第3章　東日本大震災報告書　共通編3　「地盤災害」に関する写真・データ・補足資料

第4章　その他の調査データ

【DVD版】

Disk1

第1章　地盤工学会の震災発生後の対応

第2章　「東北太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明委員会」による調査データ

第3章　東日本大震災報告書　共通編3　「地盤災害」に関する写真・データ・補足資料

第4章　その他の調査データ

Disk2

第2章　「東北太平洋沖地震による関東地方の地盤液状化現象の実態解明委員会」による調査データ

Disk3

第3章　東日本大震災報告書　共通編3　「地盤災害」に関する写真・データ・補足資料

Disk4

第4章　その他の調査データ