2022年2月21日　第1刷発行
2023年2月10日　訂正第2刷発行
2023年12月　日　訂正第3刷発行

まえがき

本書は,土木,建築,農業土木,応用地質分野の大学および工業高等専門学校,専門学校,工業高校の土質試験の教科書として,2000 年3 月に出版し,2001 年3 月の第一回改訂版,2009 年11 月の第二回改訂版を経て,2020 年12 月の土質試験の規格・基準の改正にしたがった第三回改訂版として出版したものです。
2000 年版では,それまでの「土の試験実習書」を全面的に編集し直し,新たな工夫を加え,単なる教科書としての役割だけではなく,学校卒業後の実務でも役に立つことをねらって「土質試験-基本と手引き-」として刊行しました。多くの教育現場で,教科書として活用いただきました。おかげで地盤工学会の刊行物としては86,000 冊(2010 年度版は70,000 冊)を超える発行という超ベストセラーの名誉をいただきました。
土質試験の一部はJIS(日本産業規格)で制定され,5 年ごとに見直すことが義務づけられ,地盤工学会では試験基準を10 年ごとに見直しています。2020 年はその改訂の年に当たり,土質試験の規格・基準の見直しが行われ,「地盤材料試験の方法と解説-第一回改訂版-」(通称「赤本」https://is.gd/fORFf5)が刊行されました。
本書は,その改訂にあわせて2010 年版の内容を見直し,新たに加筆修正を加えて,より充実した内容に改訂しました。
2020 年の土質試験の規格・基準そのものの改正は小幅でしたが,以下の大きな変更が行われました。
・密度の単位をg/cm3 からMg/m3 に変更する(数値的な変更はありません)。
・長さの単位としてcm は使わず,mm またはm を用いる(土の供試体寸法はmm を用いる)。
・報告すべき試験結果の有効数字(有効桁数)を明記する。
特に,長さの単位変更は,試験結果を得るための算定式等に10 のべき乗の表記が加わり,かえってわかりにくいとの意見もありましたが,赤本の改訂方針に合わせました。さらに,有効数字についてはこれまで無意味な桁まで示すことが散見されたため,その扱い方について第1 章に新たな解説を加えました。
今回の第三回改訂版も,当初の編集方針を守り,単なる試験法のみの解説書ではなく,卒業後も実務において土に関する基礎的な土質定数の意味や背景を学びたいなど,技術者の参考書としても活用できるように,本書では構成から内容解説まで工夫しています。その主なものは以下の通りです。
・見やすく親しみやすくするため,紙面をA4 版,2 色刷とし図表を多く活用しています。
・室内土質試験を実施する前に知っておいてほしい調査に関する基礎的な内容を第1 章で解説しました。
・試料のサンプリング方法,試験に用いる試料の調整方法と取扱い方法を第2 章で解説しました。
・ 現場の調査において,最初の室内試験において常に行われる土の状態を表す諸量を求める試験(含水比試験,土粒子の密度試験,湿潤密度試験)については第3 章で解説しています。
・ 各章の最初のページには,その試験に関する用語,土質定数の定義,試験の目的,試験方法の概略,結果の利用,結果の目安まで簡単に解説し,その章の概要が理解できるようにしています。
・ 試験方法は,図を活用し,理解を助け,混乱を防ぐために吹き出しや補足説明も入れて解説しています。
・ 各章の後半には,その章で求められる結果の活用と応用および関連知識が解説してあり,参考書としての役割を果たすとともに,各章末には学習効果を高めるために設問も入れています。
・ 各章の試験方法の説明部分には,データシートの記入方法について,該当する部分の記入例の見本を示すことで説明し,章末にはデータシートの記入例を示しています。
・ 本書の巻末には地盤工学会で定めている正式なデータシートを綴じています。ミシン目をはずすと正式な報告書のデータシートとしても活用可能です。
本書が,第二回改訂版と同様,多くの方々に活用いただき,卒業後の実務においても役立つこと,そして技術者の技術の向上に役立つことを願う次第です。

　2022年(令和4年)2月
「土質試験-基本と手引き」改訂編集WG
グループリーダー　大　島　昭　彦


目次

土質試験でよく用いる測定機器
第1章　土質試験の基礎
　1. はじめに
　2. 地盤調査と土質試験
　3. 土質試験をはじめる前に
　　　・試料の乱れに関する用語
　　　・誤差と精度,有効数字の扱い方
第2章　土質試験に用いる試料の調製と取扱い
　1. はじめに
　2. 土質試験に用いる器具
　3. 乱した土の取扱い
　4. 乱れの少ない土の取扱い
　5. 結果の活用と応用
　6. 設問
　7. データシートの記入例
　　　・土の色はいろいろ
第3章　土の状態を表す諸量を求める試験
　1. はじめに
　2. 土の含水比試験
　3. 土粒子の密度試験
　4. 土の湿潤密度試験
　5. 結果の活用と応用
　6. 設問
　7. データシートの記入例
　　　・電子レンジを用いた含水比試験
第4章　土の粒度試験
　1. はじめに
　2. 試験器具・試薬
　3. 試料の準備
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・海辺や砂漠の砂が歌う ♪♪
第5章　土の液性限界・塑性限界試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 試料の準備
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. フォールコーンを用いた液性限界試験
　8. 設問
　9. データシートの記入例
　　　・一点法による液性限界の決定
　　　・土の収縮定数試験
　　　・フォールコーンを用いて塑性限界は求められないか?
第6章　地盤材料の工学的分類
　1. はじめに
　2. 分類のための観察と試験
　3. 地盤材料の分類
　4. 結果の整理
　5. 結果の活用と応用
　6. 設問
　7. データシートの記入例
　　　・小分類名の質とまじり
　　　・ジオファントとは?
第7章　その他の物理的性質の試験
　1. はじめに
　2. 砂の最小密度・最大密度試験
　3. 土の保水性試験
　4. 結果の活用と応用
　5. 設問
　6. データシートの記入例
　　　・土の保水性が植物を育てる
第8章　土の化学的性質の試験
　1. はじめに
　2. 土の強熱減量試験
　3. 土懸濁液のpH・電気伝導率試験
　4. 結果の活用と応用
　5. 設問
　6. データシートの記入例
　　　・その他の化学的性質の試験
　　　・野菜の生育とアジサイの色
第9章　突固めによる土の締固め試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 試料の準備
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・現場における密度と含水比の測定
　　　・締固め過ぎにご用心?
第10章　CBR 試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 試料の準備と供試体の作製
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・CBR 試験のルーツ
第11章　土の透水試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 供試体の作製
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・低透水性材料の透水試験
　　　・砂利は,細粒土より水を通しにくい?
第12章　土の圧密試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 供試体の作製
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 定ひずみ速度載荷による圧密試験
　8. 設問
　9. データシートの記入例
　　　・試験時間を短縮する方法
　　　・生活に利用される粘土(陶器,化粧品,紙,胃腸薬)
　　　・せん断試験に関する基礎知識
第13章　土の一軸圧縮試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 供試体の作製
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・練返し供試体の試験方法
　　　・粘土の強度異方性
第14章　土の一面せん断試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 供試体の作製
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 在来型試験機による試験方法
　8. 設問
　9. データシートの記入例
　　　・せん断前に必要な重錘の追加-重錘・レバー式試験機の場合
　　　・真の定圧試験と簡易定圧試験の比較
　　　・改良型試験機の反力板側に荷重計を設置する方法
第15章　土の三軸圧縮試験
　1. はじめに
　2. 試験器具
　3. 試料および供試体の作製・設置
　4. 試験方法
　5. 結果の整理
　6. 結果の活用と応用
　7. 設問
　8. データシートの記入例
　　　・すべり面と三軸試験の関係
　　　・土の液状化強度特性を求めるための繰返し非排水三軸試験
　　　・土の変形特性を求めるための繰返し三軸試験
　　　・その他の三軸試験
付録
　付録-1 蒸留水の密度
　付録-2 水の粘性係数
　付録-3 補正係数F の値
　付録-4 土質材料の工学的分類体系
　付録-5 土質試験関係の地盤工学会基準・日本産業規格一覧表
データシート
7521 サンプリングの記録
8181 土質試験結果一覧表(基礎地盤)
8182 土質試験結果一覧表(材料)
8183 土性図
8221 地盤材料の工学的分類
8321 土粒子の密度試験(検定,測定)
8331 土の含水比試験
8341 土の粒度試験(ふるい分析)
8342 土の粒度試験(2 mm ふるい通過分分析)
8343 土の粒度試験(粒径加積曲線)
8351 土の液性限界・塑性限界試験(測定)
8353 フォールコーンを用いた土の液性限界試験
8373 土の保水性試験(水分特性曲線)
8381 土の湿潤密度試験(ノギス法)
8382 土の湿潤密度試験(パラフィン法
83A1 砂の最小密度・最大密度試験
8421 土懸濁液の(pH・電気伝導率)試験
8451 土の強熱減量試験
8521 突固めによる土の締固め試験(測定)
8522 突固めによる土の締固め試験(締固め特性)
8541 CBR 試験(初期状態,吸水膨張試験)
8542 CBR 試験(貫入試験)
8543 CBR 試験(室内試験結果)
8544 修正CBR 試験
8621 土の透水試験(定水位,変水位)
8641 土の段階載荷による圧密試験
(初期状態,圧密量測定)
8642 土の段階載荷による圧密試験(圧密量測定)
8643 土の段階載荷による圧密試験(d- t 曲線)
8644 土の段階載荷による圧密試験
(圧密量-時間曲線)
8645 土の段階載荷による圧密試験(計算書)
8646 土の段階載荷による圧密試験(圧縮曲線・透水係数)
8647 土の段階載荷による圧密試験
(cv,mv-p 関係)
8721 土の一軸圧縮試験(初期状態,軸圧縮過程)
8722 土の一軸圧縮試験(強度・変形特性)
8731 土の三軸試験の供試体作製・設置
8733 土の三軸圧縮試験[UU, CU, CU, CD]
(初期状態,圧密過程)
8734 土の三軸圧縮試験[UU, CU, CU, CD]
(軸圧縮過程)
8735 土の三軸圧縮試験[CU, CU, CD]
(圧密前,圧密後,圧密量-時間曲線)
8736 土の三軸圧縮試験[UU, CU, CU, CD]
(応力-ひずみ曲線)
8737 土の強度特性
8741 土の圧密[定体積,定圧]一面せん断試験
(圧密・せん断過程測定)
8742 土の圧密[定体積,定圧]一面せん断試験
(初期状態,圧密過程)
8743 土の圧密[定体積,定圧]一面せん断試験
(せん断過程)
8737 土の強度特性