ま　え　が　き
　この書の初版本が発刊されてからすでに10年が経過した。この間に兵庫県
南部地震(1995年)を経験し,地震災害の軽減に地盤の液状化対策が欠かせ
ないことが再認識されると同時に,強い地震動(レベル2地震動)に対する液
状化判定と対策の考え方を樹立する必要性が認識され,構造物の設計に性能設
計が導入される機運もあって,液状化時の地盤の変形や構造物の変位の予測精
度の向上に関する研究開発が盛んに行われている。
　その後2000年の鳥取県西部地震,2001年の芸予地震,さらには2003年の
宮城県北部の地震,十勝沖地震が発生し,弱齢人工地盤での液状化や斜面の流
動的な大変形,連続して起こる前震と本震に際しての液状化,降雨の中での地震
による河川堤防法面の大変形などが経験されている。
　一方,この間に『道路橋示方書』をはじめとして各種指針類において液状化
判定方法の改定,液状化時の地盤変形手法の提案などがなされ,液状化対策を
施した現場の実地震での経験の蓄積や,静的な地盤締固め方法の開発,ジオグ
リッドを用いた新たな液状化対策の実施も試みられている。
　この10年間に液状化対策の実務に携わる多くの技術者によってこの書が活
用されたと聞いているが,その役割はまだ終わっていないという声もあり,近
年の社会の要請やこれを踏まえた新たな技術開発の動向を反映しつつ,地盤工
学・実務シリーズの「液状化対策工法」として装いを新たに改訂出版すること
となった。
　改訂版の編集にあたっては,初版本と同様に液状化対策の考え方を解説した
第Ⅰ編と,工法の設計を記述した第Ⅱ編からなる構成は変えないこととし,近
年の技術動向を勘案し地盤流動への対策を新たに書き加えることとした。
　主な改訂点は,新潟地震以降の我が国における液状化対策の変遷について解
説を加えたこと,初版本の出版以降の新たな知見を出来るだけ書き加えるこ
と,さらには地盤の液状化に伴って発生する地盤流動を考えた対策が求められ
る場合があることから,液状化の発生を許容する対策工法について記述する新
たな章を設けるなどしたことである。この書が活用され液状化被害が軽減され
ることを期待する次第である。
　本書の編集にあたってご尽力頂いた編集委員会委員,執筆担当各位,ならび
に地盤工学会事務局に敬意を表する次第である。


液状化対策工法　編集委員会
委員長　佐々木　　康



目次


第Ⅰ編　総論

第1章　概要
　1.1　液状化とは
　1.2　液状化対策の考え方とその時代変遷
　1.3　性能設計的考え方と液状化対策技術の現状
第2章　液状化のメカニズムと被害
　2.1　液状化のメカニズム
　2.2　液状化による被害発生のメカニズム
　2.3　まとめ
第3章　液状化の発生および変形予測
　3.1　予測の流れ
　3.2　予測のための調査・試験
　3.3　簡易予測法
　3.4　液状化発生の詳細予測
　3.5　地盤および構造物の変形予測
第4章　設計指針での液状化の取扱い
　4.1　設計指針での液状化予測とその取扱い
　4.2　道路橋示方書
　4.3　港湾の施設の技術上の基準・同解説
　4.4　建築基礎構造設計指針
　4.5　鉄道構造物等設計標準
　4.6　LNG地下式貯槽指針
　4.7　危険物の規制に関する技術上の規準の細目を定める告示
　4.8　原子力発電所耐震設計技術指針
　4.9　高圧ガス設備等耐震設計指針
　4.10　高圧ガス導管液状化耐震設計指針
　4.11　水道施設耐震工法指針・解説
　4.12　下水道施設の耐震対策指針と解説
　4.13　土地改良事業計画設計指針
　4.14　捨て石、鉱さい堆積場建設基準および解説
第5章　液状化対策設計の考え方
　5.1　液状化対策の考え方
　5.2　地盤の液状化発生を抑制する対策
　5.3　地盤の変形・流動を考慮した対策工法
　5.4　液状化対策工法の選定
　5.5　液状化対策範囲の考え方
　5.6　既設構造物の液状化対策に特有な留意事項

第Ⅱ編　各論

第1章　密度増大工法
　1.1　工法の概要
　1.2　調査・試験
　1.3　サンドコンパクションパイル工法
　1.4　振動棒工法
　1.5　重錘落下締固め工法
　1.6　バイブロタンパー工法
　1.7　コンパクショングラウチング工法
　1.8　その他の工法
第2章　固結工法および置換工法
　2.1　工法の概要
　2.2　調査・試験
　2.3　深層混合処理工法
　2.4　事前混合処理工法
　2.5　薬液による固化工法
　2.6　置換工法
第3章　地下水位低下工法
　3.1　工法の概要
　3.2　調査・試験
　3.3　揚水工法
　3.4　排水溝工法
第4章　間隙水圧消散工法
　4.1　工法の概要
　4.2　調査・試験
　4.3　グラベルドレーン工法
　4.4　人工材料によるドレーン工法
　4.5　排水機能を利用したその他の工法
第5章　せん断変形抑制による液状化防止工法
　5.1　せん断変形抑制工法の概要
　5.2　調査・試験
　5.3　連続地中壁による工法
第6章　液状化の発生を許容する対策
　6.1　概説
　6.2　杭基礎の対策
　6.3　直接基礎の対策
　6.4　盛土の対策
　6.5　地中構造物の対策
　6.6　護岸・岸壁の対策
　6.7　液状化による地盤の流動に対する対策